東京は東中野の東京黎明アートルームで開催中の特別展『良寛の書の世界』にて、良寛の書境に浸る。
良寛の書の比類なき魅力と凄さは、その人柄と生き様とが、一切の虚飾無く、そのまま書に表れているところ。
僧侶でありながら、悟ることにさえこだわらず、無一物を貫いた良寛。
人に対しては上下を作らず、威張らず媚びず諂わず、万事において無為自然を心とし、
子供たちと隠れんぼをしたり、手毬をついたりして遊び暮らしたという良寛。
古典に深く学びつつ、独自の書境を拓き、歌人として借り物でない自身の言葉を書き表した良寛。
さればこその書。
良寛の書は名筆の次元を超えた、思想と生き様の現れであり、全人類の進化の先にある、解き放たれた精神世界の有りようを示しているように思う。
『良寛の書の世界 清らかな書の成り立ち』は東京黎明アートルームにて、7月11日まで。
またとない貴重な展覧。どうぞみなさん、お見逃しなく!
『良寛の書の世界 清らかな書の成り立ち』
会場:東京黎明アートルーム(東京都中野区東中野2-10-13)
会期:2023年 5月25日(木)〜7月11日(火)10:00~16:00 ※最終入室は15:30/ 7月3日(月)休館
展覧会パンフレットから『草庵雪夜の作』
(この文字通り、雪夜に消えゆくようでありながらも、紙に食い込むような強靭な筆致は、逝去する数日前のものと目されるとのこと)
『天上台風』
凧をあげで遊ぶ子らにせがまれ、良寛が凧に即興で書いたと伝えられる書
(※こちらの作品は、本展には展示されていません。)
中国唐代の名家、懐素の『自叙帖』を自家薬籠中のものとした、良寛の変転自在な書境。
(こちらの作品は、本展展示作品ではありません。)
良寛の里美術館に展示された六曲屏風。
ここまでくると、もはや現代アート。
(こちらの作品は、本展展示作品ではありません。)
良寛の書境は、書芸の一つの究極を示すものであり、芸術を求めるにおいて、人それぞれ道筋も手法も違えども、万事は宇宙の真理に帰するのである。
蓋し、書芸の本質は墨色の美や筆技筆法の巧みにあらず、書を通した人生観、世界観、宇宙観の創出なのである。
壯弦による書芸教室(アート書道教室/デザイン書道教室)のご案内
書芸術の究極を探る〜2023.6月ARC-TOKYO〜